循環型社会とは?製造業との関連性をベテラン技術者が解説!

学びのチェックポイント

循環型社会とは?

工作機械展で「切粉の圧縮機」を見ました!切粉を圧縮することで、リサイクルしやすくなって、カーボンニュートラルにも貢献できるそうです。

はまちゃん: 橋本先生!この前、工作機械展で「切粉の圧縮機」を見ました!切粉を圧縮することで、リサイクルしやすくなって、カーボンニュートラルにも貢献できるそうです。

橋本先生:それは「循環型社会」を意識した取り組みの一つだね。
「循環型社会」とは、資源を効率的に使用し循環させて、環境への負荷を減らしていく社会のことだよ。 最近では、さまざまな業界で「循環型社会」へ向けての取り組みが進められているよ。
今日は、循環型社会について学んでいこう!

「循環型社会」とは、資源を効率的に使用し循環させて、環境への負荷を減らしていく社会のことだよ

循環型社会が注目されている理由って?

橋本先生:「循環型社会」は、現在、問題とされている「天然資源の枯渇」「ゴミ問題」の解決や、以前このセミナーでも取り上げた「脱炭素社会」を実現するための手段として、注目されているんだよ。大量生産・大量消費の経済を見直して、持続可能な社会を作ることが求められているんだ。

天然資源の枯渇

資源には限りがあり、このままの消費が続くと、100年ほどで枯渇すると言われている。

■世界のエネルギー資源確認埋蔵量

世界のエネルギー資源確認埋蔵量

出典:原子力・エネルギー図面集

ゴミ問題

大量生産・大量消費により生活が豊かになった結果、廃棄物が増加。
2050年には現在の約2倍の廃棄量となることが予測されている。

■世界の廃棄物量の推移(将来)

世界の廃棄物量の推移(将来)

出典:第2節 静脈産業で世界の循環型社会の構築を

脱炭素社会

地球温暖化の原因となる温室効果ガス(CO2)の排出量「ゼロ」を目指す社会のこと。
詳細はこちら:やさしいWEBセミナー「脱炭素社会と未来のエネルギーとは?」

はまちゃん:わたしたちの便利で豊かな生活の背景には、さまざまな問題が発生しているのですね。

循環型社会実現のために実施されていること

日本での取り組み

橋本先生:日本では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」がスタートしたよ。
その法律に基づいて「循環型社会形成推進基本計画」が策定され、基本方針や目標値などが、まとめられたんだ。

■循環型社会形成推進基本計画

【取組の進展に関する指標の例】

持続可能な社会づくりとの統合的取組 • 循環型社会ビジネスの市場規模  • 家庭系・事業系⾷品ロス量
多種多様な地域循環共生圏
形成による地域活性化
• 1人1日当たりのごみ排出量
• 1人1日当たりの家庭系ごみ排出量
ライフサイクル全体での徹底的な資源循環 • 国⺠1人当たりの一次資源等価換算した天然資源等消費量
• 廃棄物等種類別の出口側の循環利用率
適正処理の更なる推進と環境再生 • 不法投棄、不適正処理の発生件数
• 一般廃棄物、産業廃棄物最終処分場の残余年数
万全な災害廃棄物処理体制の構築 • 災害廃棄物処理計画の策定率
適正な国際資源循環体制の構築と
循環産業の海外展開の推進
• 資源循環分野を含む環境協⼒に関する覚書締結等を⾏った国の数
循環分野における基盤整備 •• 電子マニフェストの普及率  • 具体的な3R⾏動の実施率

※下線は第四次循環計画において新たに定めた指標

【目標値】

  2000年度 2015年度 2025年度 目標
資源生産性(万円/トン) 24 38 49(+102%)
入口側の循環利用率(%) 10 16 18(+8ポイント)
出口側の循環利用率(%) 36 44 47(+11ポイント)
最終処分量(百万トン) 57 14 13(▲77%)

※( )内は2000年度比

【出典】環境省「第四次循環型社会形成推進基本計画」

はまちゃん:20年以上前から、法律が制定されていたとは驚きました!
2025年までに達成しなければならない、目標がたくさんあるのですね。

橋本先生:2021年には環境省が、日本の取り組みを国内外に向けて発信する「循環経済パートナーシップ」を開始したよ。これには、一般企業も参加することができるんだ。

■循環経済パートナーシップ 事例(一部抜粋)

【使用済みタイヤの再活用】
自動車タイヤのすり減った部分を張り替え、再度使用する。(リトレッドタイヤ)

【バイオプラスチックの開発】
植物など、自然に還すことができる有機物を原料としたプラスチック。
バイオマス、微生物などによる分解が可能な生分解性タイプの2種類がある。

【出典】「循環経済パートナーシップ公式サイト」

はまちゃん:循環経済への流れが世界的に加速する中で、官民連携を強化して取り組んでいるんですね!日本での取り組みは理解できましたが、海外で行われている取り組みはあるのでしょうか?
詳しく知りたいです。

循環経済への流れが世界的に加速する中で、官民連携を強化して取り組んでいるんですね!日本での取り組みは理解できましたが、海外で行われている取り組みはあるのでしょうか?

国際的な取り組み

■アジア太平洋3R推進フォーラム

日本が提唱し2009年設立された、アジアの環境と経済の両立を図り、循環型社会を実現することを目指す取り組み。3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進に向け、各国政府や国際機関、NGOなど幅広い団体が協力する際の基盤となることを目的としている。 日本以外に、中国や韓国、オーストラリア、シンガポールなど、計39か国が参加している。

【出典】環境省「アジア太平洋3R推進フォーラム」

■特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令(ヨーロッパ)

2019年に使い捨てプラスチックの流通を禁止する法案が採択された。 2021年7月から、プラスチック製のカトラリー類、ストロー、発泡スチロール製の容器などの使用を禁止。廃棄物の削減を目指している。

【出典】SUP、EU指令2019/904

循環型社会のためにわたしたちができること

はまちゃん: 循環型社会へ向けて世界でもさまざまな取り組みが行われているのですね。
私たちの生活の中で具体的にできることはありますか?

橋本先生:そうだね。国際的な取り組みの中で紹介した「3R」を実践するのがおすすめだよ。

3Rとは?

3R=リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の略。

3R=リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)

■R(リデュース)

資源の消費、ごみの発生をもとから減らす
できること:ごみになるものを買わない・もらわない、マイバッグを持って無駄な包装は断る など

■R(リユース)

繰り返し使うことで、ごみを減らす
できること:詰め替えできる容器に入った製品を選ぶ、フリーマーケットやガレージセールなどを利用し、不用品の再活用に努める など

■R(リサイクル)

資源として再び利用することで、ごみを減らす
できること:資源として分別する、リサイクル製品を積極的に利用する など

【出典】環境省「もっと先の未来を考えるエコ・マガジン ecojin/【特集】3R徹底宣言!」

橋本先生:今まで、日本では廃棄物を燃やして「熱エネルギー」を回収するサーマルリサイクルが主流だったけれど、最近では、廃棄物を新しい製品に作り替える、化学分解して再利用するリサイクル方法が増えているよ。

はまちゃん:リサイクル方法も変化しているのですね! エコバックを持ち歩くなど、普段の生活の中に3Rを取り入れていきたいです。

橋本先生:循環型社会の実現には、一人ひとりの努力が必要なんだよ。日々の生活を少しずつ見直して、続けていけるようにしたいね。
製造業での取り組みについては以下にまとめたよ。

製造業での取り組み

■循環経済ビジョン2020

経済産業省が発表した、今後の日本の循環経済への移行に向けたビジョン。環境活動としての3Rから、経済活動としての循環経済(サーキュラーエコノミー)への転換を図るための方向性を示したものとして位置づけられている。

【出典】経済産業省「循環経済ビジョン2020」を取りまとめました

■具体的な事例

自動車

【自動車】
リサイクルしやすくするため、簡単に解体できる
構造への設計へ移行。

紙で作られた洋服

【紙で作られた洋服】
合成繊維ではなく、和紙や紙の糸で作られた洋服。
天然素材のため、分解して土に返すことができる。

食べられる容器やカトラリー

【食べられる容器やカトラリー】
ソフトクリームのコーンのように食べることができる容器や
カトラリー。食べることでゴミを削減できる。

代替肉

【代替肉】
大豆や小麦などの植物から作られた肉に似せた食べ物。
植物性の食材を使っているため、畜産と比較して、 温室効果ガスの発生や森林伐採を抑制できる。

橋本先生:「循環経済」の実現に向けた製品が、どんどん開発されているよ。

はまちゃん:自動車や洋服、食品などあらゆる業界で、環境に配慮した製品が 開発されているのですね。

橋本先生:三木プーリにも貢献している製品があるよ。

1.無励磁ブレーキ(BXR-LE

・多関節ロボットの省エネ、省スペース化に貢献

専用コントローラーによる制御で通電時の電圧を1/3に抑えることが可能。コンパクト設計のため、省スペース化にも貢献。多関節ロボットなどの非常停止用のブレーキとして採用されている。

無励磁ブレーキ/多関節ロボットの省エネ、省スペース化に貢献

2.ロスタ(揺動マウントAB

・振動式スクリーン*の振動伝達

揺動運動を確実に伝達すると同時に、振動を吸収することが可能。
共振時の揺動を1/5に抑制し、床や建物への影響を低減する。(コイルばねとの比較)

#

*リサイクルのため廃材、瓦礫などの選別する装置のこと

橋本先生:そう言えば、過去にお客様からの要望で、分解しやすいネジを 設計したこともあったね。

はまちゃん:分解しやすければ、リサイクルするのも簡単ですね! 「循環型社会」や「循環経済」についてもっと勉強して、環境に配慮したカップリングやブレーキの提案ができるようになりたいです!

「循環型社会」や「循環経済」についてもっと勉強して、環境に配慮したカップリングやブレーキの提案ができるようになりたいです!
橋本先生
監修・講師
橋本先生 / 三木プーリ株式会社

1972 年三木プーリ株式会社 入社。プロダクトマネージャーとしてマー ケティング・技術を担当し、国内外問わずに活躍。
さらに、企業のみならず大学や専門機関との共同研究にも従事。 現在は、技術指導・社員教育も担当。

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