共振とは?機械設計における振動の原因と対策方法を解説!
- 1.振動と共振とは?
- 2.振動や共振はなぜ起こるの?
- 3.共振はいつ起こるの?
振動と共振とは?
声だけでグラスが割れるのはなぜ!?
はまちゃん: 橋本先生!この前テレビで声だけでワイングラスを割る人を見ました!
声でグラスが割れるなんて驚きです!一体何が起こっているのでしょうか?
橋本先生:なるほど。それは、「共振」によって起こる現象だね。「共振」は機械設計をする上でも考慮すべき重要な内容なんだよ。今回は「振動、共振」についてくわしく学んでいこう。
音と振動
橋本先生:まずは、音と振動について確認してみよう。
私たちが聞いている「音」とは「空気の振動」なんだよ。
物をたたいたり、擦ったりすることで「振動」が発生して、それが「空気の振動」となり、耳に伝わって「音」として聞こえているんだ。振動は空気(気体)、水(液体)、金属(固体)などがないと伝わらないため、「真空」では音が聞こえないんだよ。
「音」には音圧(大きさ)、音程(周波数)、音色(波形)の三つの要素があるんだ。
音と振動について詳細を表にまとめてみたよ。
■音と振動の種類
音 | 振動 | ||
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大きさ | 空気の圧力変化量 音圧:dB(デシベル) | 振幅の大きさ 用途によって変位、速度、加速度を使い分ける |
|
・変位:m | |||
・速度:m/sec | |||
・普通の会話:40~60dB ・電車の中:80~100dB ・飛行機の騒音:120dB |
・加速度:m/sec2 | ||
周波数 | 音程(=音の高さ) | 機械振動の振動数 |
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・人の可聴周波数 20~20kHz ・低周波数:ピアノ最低音 27.5Hz ・高周波音:ピアノ最高音 4186Hz |
・周波数分析で、どの部分から音が出ている振動かわかる ・固有振動数や共振の原因がわかる |
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※「周波数」とは、1秒間に繰り返す波の数の ことで、音、振動、電流などを表す際に 使用される。単位はHz(ヘルツ) | |||
波形 | 音色 | 機械特性 |
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音叉とバイオリンの「ラ」の音(440Hz) 440Hzの~整数倍周期の重なりで音色が決まる | ・エンジンのトルク、振動特性がわかる ・ピストンでの爆発によるトルク変動から特性や異常などがわかる |
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はまちゃん:なるほど。「音」と「振動」には密接した関係があるのですね。
橋本先生:次に「振動」と「人間の感覚」を比較するグラフを作成してみたよ。
橋本先生:グラフは縦軸が振幅、横軸が振動数を表しているよ。 低い周波数はゆっくりした動きなので、目で確認することができるんだ。 5Hz以上になると目では確認できないけれど、手で触れると振動していることがわかるよ。 さらに振動数が高くなると手で触れてもわからないけれど、異音として聞こえるようになるんだ。人の目、指先、耳のセンサは上手くできていて、無意識で振動や周波数の違いを感じ取っているんだね。
振動や共振はなぜ起こるの?
振動の種類と発生メカニズム
橋本先生:続いて振動の種類と発生メカニズムについて説明するよ。 振動には自由振動数、強制振動数、自励振動の大きく三つの種類があるんだ。 また、振動の方向によって、直線振動・曲げ振動・ねじり振動に分類されるよ。
振動発生メカニズムによる分類 | ||
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自由振動 | 強制振動 | 自励振動 |
一度外力を加えると、外力が継続しなくても振動が継続する現象 | 周期的な外力で振動する外力の周波数が変わると振動数も変化 | 振動的でない外力で振動が発生、固有振動数で振動 |
【具体例】 ・直線方向の固有振動数 ・ねじりの固有振動数 ・曲げ方向の固有振動数 |
【具体例】 ・モータ回転変動 ・アンバランス ・エンジン回転変動 |
【具体例】 ・バイオリンの弓を奏でる ・ブレーキの鳴き音 ・風のカルマン渦でタコマ橋共振 |
はまちゃん:機械設計に関連する装置やモータの他、楽器やブレーキなど身近なものでも振動に関係しているのですね。 「振動」を分析することで、機械装置の故障の原因を素早く発見できそうです。
固有振動数と共振
橋本先生:物には固有の振動数があって、これを「固有振動数」と言うんだ。 ちなみに人の「固有振動数」は2~5Hzと言われていて、この振動数になると不快に感じるよ。 自動車など乗り物の座席は、同じ振動数にならないよう工夫して設計されているんだ。 「固有振動数」は、計測システムや計算式などで確認することができるよ。 例えば、エンジン発電機の場合以下のような計算式で求めることができるんだ。
■エンジン発電機システムのねじり固有振動数簡易計算式
■共振とは?
固有振動数と同じ周波数で振動を与えると、加えた振動の大きさよりもはるかに大きい振動(数十倍)が発生する現象のこと。この共振倍率はその材質によって大きく変化する。 金属では50~80倍、ゴム・樹脂では5倍~10倍になると言われている。 固有振動数も直線・曲げ・ねじり方向でそれぞれ異なる。
橋本先生:冒頭の声でワイングラスを割るパフォーマンスは、この「共振現象」の代表的な例だね。 声で空気を振動させ、音程で周波数を調整して、ワイングラスに強制振動を加えるんだ。 「強制振動数」とワイングラスの「固有振動数」が合致すると、加えた振動よりも大きな振動が発生して、ワイングラスが割れてしまうんだよ。
はまちゃん:「固有振動数」と「共振」にはそのような関係性があるのですね。「共振」はいつどのように発生するのでしょうか? 具体例も含めてくわしく知りたいです。
共振はいつ起こるの?
さまざまな共振現象
1.エンジンと発電機の共振
エンジンのトルク変動する周期成分と前述で求めたエンジン発電機のねじり固有振動数がある回転域で同じになったとき共振が発生し、カップリングのゴム体が破損(変形、溶損)。
橋本先生:エンジン発電機の場合、右図の赤線で示すように使用回転域内に共振点が存在するんだ。この共振点をねじり剛性が柔らかいゴムカップリングを使用し、低速回転域に移動することで、エンジン起動時に共振点を通過させて回避できるんだよ。
ロケットエンジンの開発でも共振問題との取り組みが重要だよ。エンジンのターボポンプで超高速回転するタービン翼が共振による金属疲労で破損するケースもあるんだ。いかに共振しないように設計するか、共振を回避するかをシミュレーションと実機試験によって開発がすすめられているよ。
2.サーボ・ステッピングモータの振動による共振
ステッピングモータはステップ状に回転するモータで小型アクチュエータに採用されている。マイクロステップなどでなめらかな回転制御が行われているが、微小な振動と機械系の固有振動数がある回転域で共振するケースもある。またサーボモータもモータの脈動トルクとモータフレームが共振する場合がある。使用回転域でどの様な共振があるのかを把握し、回避する必要がある。
橋本先生:装置の固有振動数、制御系のステップ周波数、共振回転域を把握し、回避(通過)することが重要なんだよ。カップリングのねじり剛性を柔らかくする(ゴム系カップリング、樹脂系カップリング)またはねじり剛性を硬くする(金属板ばねカップリング)で共振点を使用回転域から回避する場合もあるんだ。
3.共振を利用した振動コンベア
振動を使ってモノを搬送する装置。振動を共振させ、そのエネルギーでコンベアー自体が揺動する仕組みのため、駆動モータの容量は小さくて済む。長いコンベアーでは加点(共振で揺動部)が多くなりスムーズな搬送が可能。
橋本先生:また最近では、振動を利用した振動発電の装置が開発されているよ。わずかな振動で圧電素子を使って発電する仕組みのものや、音や床に敷いたマットを踏むことで発電できるんだ(音力発電、床発電)。共振や振動は物を壊したり、騒音を発生したり有害なイメージが多いけど、振動発電や共振を利用する技術により、役立つエネルギーに替えることができるんだ。省エネ、蓄電への利用も期待できるね。
はまちゃん:素晴らしい仕組みですね。 共振や振動についてしっかり学んで、設計や開発技術に生かせるようになりたいです!!
橋本先生 / 三木プーリ株式会社
1972 年三木プーリ株式会社 入社。プロダクトマネージャーとしてマー
ケティング・技術を担当し、国内外問わずに活躍。
さらに、企業のみならず大学や専門機関との共同研究にも従事。
現在は、技術指導・社員教育も担当。