センサとは?装置の感覚器官を司るセンサの種類と事例をベテラン技術者がわかりやすく解説!
センサとは?
センサの定義
はまちゃん: 橋本先生!産業用ロボットや協働ロボット、AGV/AMRについて学ぶ中で「センサ」が使われていることに気づきました。今回は、センサの種類や原理、どんなところに使われているのか知りたいです!
橋本先生:良いところに気付いたね。センサは、ロボットやAGV、スマートフォンやドローンなどで重要な役割を担っているんだよ。まずは、センサの定義から学んでいこう。 センサ(sensor)は「日本工業規格」「JIS-Z8103-2000」では以下のように定義されているよ。
・測定量によって直接に影響を受ける、計器又は測定装置の連鎖の素子。 備考:検出器と同じ意味に用いることがある。 【参考】JIS 規格 https://kikakurui.com/z8/Z8103-2000-01.html
橋本先生:センサとは、音・光・温度・圧力などの物理的、化学的な現象を電気信号やデータに変換して出力するデバイスや装置のこと。 私たちの日常生活の至るところでセンサは活躍しているよ。例えば、部屋の中にあるエアコンには温度や湿度を計測する温度・湿度センサーが搭載されているよ。 スマートフォンでは、現在地を確認するGPSや傾きや動きを検知する加速度センサや、距離を測る距離センサやカメラなどが搭載されているよ。
センサはどんな役割を担っているの?
はまちゃん:センサにはさまざまな種類があるのですね。 それぞれの役割について、詳しく教えてください。
橋本先生:人には、「見る」「聴く」「嗅ぐ」「触れる」「味わう」など「五感」に代表されるさまざまな「感覚器官」が備わっているよね。これが人の持っている「センサ」なんだ。人の身体に備わっている「感覚器官」と装置における「センサの役割」を対応させた表を作ってみたよ。
角度や回転数を測定 | ロボットなどの回転する関節部分の角度を検出して、 どの様な姿勢かを把握するセンサ |
|
---|---|---|
関節 | ポテンショメータ | 特定の軸において、角度変化を一定の範囲内で測定 |
ロータリーエンコーダ | 特定の軸において、何回転もするものの角度や回転数を測定 | |
傾斜センサ | センサのおかれている場所の傾きを測定 | |
バランス | 加速度センサ | 1秒間に速度がどれだけ変化したかを測定 |
ジャイロセンサ(角速度計) | 1秒間に角速度がどれだけ変化したかを測定 | |
力やモーメントを測定 | 物体に加えた力の変化量を利用して、力やモーメントを測定するセンサ | |
力・触覚 | ひずみゲージ | ひずみゲージによって弾性体の変位・変形を測ることで力やモーメントを測定 |
静電容量センサ | 静電容量を利用して物体の変化を検出 | |
圧電素子 | 誘電体(ピエゾなど)に力を加えて発生する電圧により力や圧力などを検出 | |
6軸力覚センサ | ひずみや静電容量の変化で力やモーメントを測定 | |
対象の形や色、位置や動きを測定 | カメラを用いて、人間における視覚報を得るセンサ ロボットやAGVが障害物を発見し、避けるために対象物までの距離を測るセンサ | |
視覚 | イメージセンサ(カメラ) | カメラでとらえた映像で、対象物の面積、重心、長さ、位置などを算出し、データや判定結果を出力する |
ステレオビジョン | 平行に置かれた2台のカメラで画像を撮影し、物体までの距離を正確に計測 | |
超音波センサ | 超音波によって対象物までの距離を測定 | |
赤外線距離センサ | 赤外線によって対象物までの距離を測定 | |
LiDAR | 光を使って離れた物体の距離や方向を測定 |
センサにはどんな種類があるの?
はまちゃん:人間が持つ五感の役割は、装置においてもさまざまなセンサで実現しているのですね!各センサについてもっと知りたいです!
橋本先生:それでは、紹介したセンサの中から、特に主要な6つを詳しく解説していくよ。
エンコーダ
回転角や直性変位を符号化(encode)するセンサ。回転を検出するものはロータリーエンコーダ、直線の変位を検出するものはリニアエンコーダと呼ばれる。ロータリーエンコーダは、等間隔のスリットが開けられた円板が入っており、円板の片方で光を発し、もう一方で通過する光の点滅を検出し、測定することにより軸の回転角度や回転数、回転速度を測定している。サーボモータなどに多く使われている。
加速度センサ
1秒間あたりの速度がどれだけ変化したかを検知するセンサ。さまざまな種類があるが、単純な構造のものは、ばねとその先に付けたおもりから構成される。加速・減速で起こる慣性の法則によって、伸び縮みするばねの変化量を電気信号に置き換え、加速度を測定する。最近では、MEMS技術により小型で安価なセンサが、さまざまな用途で活躍している。
■MEMS(メムス)とは?
Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略。 半導体技術で作られたミクロの構造体で、センサやアクチュエータ、電子回路が集積された装置。半導体プロセスの製造工程で作られるため、1個のICが約1cm角と小型で低価格かつ機能の集積化が図られている。スマートフォンやPC、ゲーム機、自動車のセンサ等に採用されている。
超音波センサ
発信から受信までの「時間」を計測することで対象物までの距離を検知するセンサ。距離の測定手法としてよく使われるTOF(Time of flight)は、飛行時間という意味で、発したものが対象物に反射して返ってくるまでの時間を計測する手法。代表的なものは、光と超音波。センサヘッドから超音波を発信し、対象物から反射してくる超音波を再度センサヘッドで受信する。
LiDAR(Light Detection and Ranging:ライダ)
対象物までの距離を計測したり対象物の性質を特定する、光センサ技術のこと。走査しながらレーザ光を対象物に照射し、その散乱や反射光を観測している。測定過程においてもToFが利用されている。(ToF:Time of Flight ) はやぶさの距離計測にもLiDARが使われており、その着陸の精度は1mと高精度。その他、自動車やスマホにも使用されている。 ▶ 詳しくはこちら
ひずみゲージ
ひずみを電気信号として検出するセンサのこと。 外力を加えて伸縮させると、その抵抗値も増減する。したがって、ひずみが生じる測定対象物に接着しておけば、測定対象物の伸縮に比例してひずみゲージが伸縮し、抵抗値が変化する。変化した弾性体の変位・変形をを検知することで、力やモーメントの測定が可能になる。 ※ひずみとは、材料に加わる外力に比例して材料が伸びたり縮んだりする変形の量のこと。
イメージセンサ
カメラで撮像したデータを処理し、対象物の位置や角度、形状、寸法、数量などを出力し、登録したデータと照合して合否判定を行うセンサ。光を電気信号に変換する半導体素子を用いており、人間の網膜に相当する。いくつかの層で構成され、マイクロレンズとフォトダイオードの間にカラーフィルタ(RGB)を通すことにより、カラーの画像信号を取得することができる。
センサはどんなところで活躍しているの?
はまちゃん:センサは私たちの日常生活において様々な分野で役に立っているのですね!
橋本先生:日常生活に役立つ事例はまだまだあるよ。玄関のインターフォンにはイメージセンサや音センサ、夜に自動点灯する外灯は光センサで検知しているんだ。また、スマートフォンでは位置情報のGPSや手振れ防止のジャイロセンサなど、紹介したい事例はたくさんあるよ!
はまちゃん:どんな場所にセンサが使われているか、意識して生活してみようと思います!装置や機械部品にセンサを採用している事例はありますか?
橋本先生:もちろん!三木プーリの事例を2つ紹介するよ。
トルクセンサ×カップリング
装置の回転時に発生するトルクを検知するセンサ。静電容量方式のトルクセンサは、コンデンサに内蔵される2つの金属板における変位量をトルクに変換して表示する。コンデンサは、2つの金属板とそれに挟まれた誘導体で構成されており、静電容量によって電荷を蓄えたり放出したりする一般的な受動部品。
三木プーリでは、静電容量方式のトルクセンサを内蔵したカップリングを開発中。回転動力の伝達と同時にカップリングヘ負荷されているトルクの検出を可能にした。静電容量方式のトルクセンサを内蔵することで、回転時の負荷トルクを直接検出できるため、設備の稼働状態を正確に把握することができる。トルク計を中心としたシステムと比べて部品点数を大幅に削減することができ、シンプルな構造とすることが可能になった。
磁気センサ×リニアアクチュエータ(リニアシャフトドライブ)
磁石や電流が発する磁気や地磁気などの大きさ・方向を検知する磁気センサ。 三木プーリのリニアアクチュエータ(リニアシャフトドライブ)は、ホール素子を使って位置情報を検出している。シャフトから発生する磁束を利用した位置検出ができるため、外付け位置センサなしでの運転が可能。さらに、内蔵された位置センサが磁極位置を直接検出するため、外付けの磁極検出器などを用意することなく起動後すぐに推力を発生する。ドライバーには、位置決め運転機能などを内蔵しているため、外部コントローラを用意しなくても比較的複雑な位置決め運転まで可能。
はまちゃん:装置や機械部品でもセンサが活躍していることがわかりました!センサを使って、今話題の予知保全に役立てるという話もよく聞きます。もっとセンサについて勉強して、設計や開発技術に生かせるようになりたいです!
橋本先生 / 三木プーリ株式会社
1972 年三木プーリ株式会社 入社。プロダクトマネージャーとしてマー
ケティング・技術を担当し、国内外問わずに活躍。
さらに、企業のみならず大学や専門機関との共同研究にも従事。
現在は、技術指導・社員教育も担当。