発振とは?発振の原因と対策、共振との関係性を解説!
- 1.発振とは?
- 2.発振はなぜ起こるの?
- 3.発振しない方法はないの?
発振とは?
カラオケでスピーカがキーンとなるのはなぜ!?
はまちゃん: 橋本先生!この間、カラオケでマイクのボリュームを上げたら、スピーカからキーンという大きな音が出てびっくりしました。一体何が起こっているのでしょうか?
橋本先生:なるほど。それは、「ハウリング」という現象だね。 「ハウリング」は音響設備で起きる現象なんだよ。 機械設計で問題視されている、サーボモータの「発振現象」もこのハウリングとよく似ているんだ。今日は「発振」についてくわしく学んでいこう!
ハウリング現象
橋本先生:まずは、カラオケの「ハウリング」について考えてみよう。 スピーカとマイクを近づけたり、アンプのボリュームを上げると”ピーー”とか”キーン”と鳴る、あの現象のことを「ハウリング」と呼ぶよ。
■カラオケで起こるハウリング現象のメカニズム
はまちゃん: マイク、アンプ、スピーカ、それをまたマイクで拾って、ぐるぐる回り続けて止まらなくなってしまうのですね。
橋本先生:その通り。電源を切るか、マイクをスピーカから離さない限り延々に続いてしまうよ。
ハウリング現象と発振
橋本先生:産業機械やロボットなどに使われるサーボやステッピングモータも、まれにハウリングと似た現象が起きるんだ。装置を動かすための指令に対して結果の「フィードバック制御」の情報の遅れや装置の「固有振動数」などが影響しているんだよ。
サーボモータでは「発振」や「共振」という呼び方をしているんだ。
ステッピングモータは、一般的に「オープンループ」といって指令した分だけ動く制御を行っているので「発振」するケースはないんだ。
でも、高精度を要求される場合、サーボモータと同じようにフィードバック制御をすることがあるので、ステッピングモータでも「発振」が起きるケースがあるんだよ。
発振はなぜ起こるの?
ハウリングと発振の発生メカニズム
ハウリング現象 (マイクをスピーカに近づけた時) |
送りねじの発振 (サーボ・ステッピングモータの フィードバック制御) |
|
---|---|---|
①検出器 | マイク 音を電気信号に変える |
エンコーダ 角度・回転を電気信号に変える |
②増幅器 | アンプ 音の電気信号を増幅する |
サーボコントローラ・アンプ 回転指示、動作結果を比較してその差を増幅してゼロにするようにモータを制御する |
③駆動部 | スピーカ 増幅された電気信号でコーンを振動させ空気振動で音を発生 |
モータ 指令の電流でモータを回転する 送りねじシステムの固有振動数が刺激される |
ループ | 発生した音を近くのマイクが拾って①に戻り②、③と繰り返しループ状態となる | モータの動作および外乱である固有振動数が刺激され①に戻る。①に戻された固有振動数は増幅され②、③、①とループ状態となる |
はまちゃん:カラオケの「ハウリング」と、サーボモータやステッピングモータの「発振」が似ているとは、驚きです!
橋本先生:工作機械や半導体製造装置、製造設備のアクチュエータなどに、多くのサーボモータが利用されているよ。その仕組みについても紹介しておくよ。
送りねじ機構におけるサーボモータの発振現象
- ⑴サーボコントローラから回転速度や回転角度、位置を指示。
- ⑵サーボアンプは⑴の指示に従ってサーボモータに電流を流して制御。
- ⑶サーボモータは⑵の指示に従って動き出し、指令に対して合っているかエンコーダ(検出器)によって
情報をフィードバックし、常に補正をしながら追従する。
※ここで速度や位置情報の精度を上げるためにシステムの感度(ゲイン)を上げていく。
感度(ゲイン)を上げていくと、装置の振動(固有振動数)がエンコーダを介してフィードバック信号に
混入する。 - ⑷サーボモータは⑶の固有振動数でわずかでも加振する。
装置の固有振動数をエンコーダが検出し、この固有振動数
をコントローラのアンプの感度でさらに増幅し、 この固有振動数でモータが加振することにより、「機械共振」が
起き、エンコーダが検出してエンドレスなループとなる。
■サーボモータとは?
モータ内のセンサーによって運転を監視することで、高精度な「位置制御」「速度制御」「トルク制御」を可能とするモータのこと。
■自由振動とは?
・一度外力を加えると振動が継続する現象。
・振動は時間とともに減衰する。
・同じ構造物では発生する振動は同じで「固有振動数」と呼ばれる。
■強制振動とは?
・周期的な外力で振動する現象。
・外力の周期が変わると振動数が変化する。
・加えた振動数が固有振動数近くになると、共振が起き非常に大きな振動が発生する。
■共振とは?
・「固有振動数」と同じ周波数で振動を与えると、加えた
振動の大きさよりもはるかに大きい振動が発生する
現象のこと。
・共振の大きさは伝達率(右図)で表され、材質の減衰比
で決まる。
・金属の場合は元の振動に対して数十倍、ゴムの場合は
数倍の共振振動が発生する。
- 【右図解説】
- ・ζ=0.01未満 金属
- ・ζ=0.02~0.04 金属製の連続構造
- ・ζ=0.05 ゴム
- ・周波数比率=強制振動数/固有振動数
はまちゃん: 高精度、高応答のためにサーボモータの感度を上げてくると、今度は機械の「固有振動数」を刺激して「発振」が起きてしまうのですね! また、物の「固有振動数」は、さまざまなところに影響することもわかりました。 「固有振動数」を事前に知ることはできないのでしょうか?
橋本先生:最近では、解析技術が進んで「固有振動数」をシミュレーションすることが出来るんだ。簡易的には以下の計算式で求められるよ。
■送りねじシステム固有振動数の簡易計算式
橋本先生:「発振」や「共振」は部品の破損や装置の故障原因となることがあるので、注意する必要があるんだ。初めて装置を動かすときにサーボシステムの調整をすることが大切なんだよ。
発振しない方法はないの?
はまちゃん:「発振」や「共振」の原因や関係性は理解できましたが、「発振」を防ぐ方法はないのでしょうか?
橋本先生:いい質問だね。まずは先程のサーボモータを例にして、「発振」を防ぐ方法を説明していくよ。サーボモータで「発振」や「共振」が発生する原因はなんだったかな?
はまちゃん:サーボ機構のフィードバック制御に入り込んだ外乱(この場合は機械の固有振動数)が原因です。
橋本先生:その通り!具体的な対策方法は以下だよ。
発振を防ぐための対策
対策①:サーボモータのオートチューニング機能で調整
サーボモータに付属のオートチューニング機能で調整を行う。
初めて動作させる際に行う必要がある。オートチューニング機能がない場合は、サーボモータの制御盤で調整するため、専門的な知識が必要。
対策②:ドライバのフィルタ機能で制御(①で解決できない場合)
機械系の固有振動数がシステムに入り込まない様に、その固有振動数を把握して電気的に抑制する。
(ノッチフィルタ、電流ループ指令フィルタ)
サーボモータ自体にこの固有振動数を測定する機能が付いている場合もあり。
(周波数応答線図測定)
対策③:高減衰ゴムカップリング(ステップフレックス)を使用
減衰性のあるゴムカップリングにより、共振時の振動を吸収することで、機械・装置のねじり固有振動数のピークが抑えられ、サーボの発振を抑制することができる。(金属カップリングと比較) 高精度位置決めや、油・高温雰囲気で使用する際には、注意が必要。
■サーボモータの周波数性能の比較
ゴムカップリングのステップフレックスでは固有振動数の1kHz付近の山が抑制され発振しにくいことが想定できる。
■サーボモータの発振現象 対策動画
はまちゃん:サーボモータ自体に備わっている仕組みやカップリングを変更することで、「発振」を防ぐことができるのですね!
「発振」や「共振」についてたくさん勉強して、設計や技術開発について色々な提案ができるようになりたいです!
橋本先生 / 三木プーリ株式会社
1972 年三木プーリ株式会社 入社。プロダクトマネージャーとしてマー
ケティング・技術を担当し、国内外問わずに活躍。
さらに、企業のみならず大学や専門機関との共同研究にも従事。
現在は、技術指導・社員教育も担当。