AGV・AMRとは?物流施設で進む自動化と次世代の自律走行搬送ロボットを徹底解剖!

学びのチェックポイント

自律走行するロボットがいるってホント!?

AGV(無人搬送車)とは?

はまちゃん: 橋本先生!先日、工場の中で活躍している無人搬送車を発見しました!倉庫の中で多種多様かつ大量の商品を、無人で搬送できると聞きました!

橋本先生:その通り。AGV(無人搬送車)と呼ばれているよ。磁気テープなどの誘導方式により、必要な部品を必要な場所に、作業の邪魔をせずに人に代わって運ぶことができる無人搬送車だよ。 工場や倉庫内で走行するほか、スマートビルでの配送、警備、清掃用としても利用されているんだ。

工場・倉庫用(運搬ロボット) スマートビル用(左:警備ロボット、右:配送ロボット)

■AGV(無人搬送車)とは?

Automation Guided Vehicleの略。 JISD6801では、「一定の領域において、自動で走行し、荷など人以外の物品の搬送を行う機能をもつ車両で、道路交通法に定められた道路では使用しないもの」と記載されている。磁気やレーザー、光学などの誘導方式に従って決められたルート上を走行する。

■AGVによる走行方式の種類

誘導方式 特徴 イメージ
第1世代 電磁誘導 床に設置された金属線に微弱交流電流を流し、磁場をセンサーで検出して移動する 電磁誘導、磁気誘導
磁気誘導 磁性体の棒や磁気テープを床に設置し、磁気センサーで読み取って誘導する。国内では最も普及率が高いが、今後2世代、4世代へのシフトもしくはハイブリッド型が普及すると考えられる。
第2世代 画像認識 床や天井に描かれたQRコードやARマーカーなどの記号を読み取り自分の位置を把握する。高精度な位置決めが可能。 画像認識
第3世代 レーザー(反射板) 建屋内の壁や柱に反射板を取り付け、レーザーの反射で自己位置を推定し自律走行する。 車両の走行範囲の全てに十分な数の反射板を設置する必要がある。 レーザー(反射板)
第4世代 SLAM
(自己位置推定・環境地図)
・Visual SLAM
・LiDAR SLAM
カメラやレーザーなどのセンサーとエンコーダやジャイロスコープを使って自己位置推定を行い走行。 誘導体の設置不要で、自律走行が可能。 自律走行搬送ロボットAMR、非ガイド走行方式 AGV、次世代AGVと呼ばれることが多い。 SLAM
(自己位置推定・環境地図)

・世界的な呼び方として、AGVが浸透しているが、最近では自律走行型をAMRと呼び区別することが多い。

橋本先生:AGV(無人搬送車)は以前から利用されていて、正確な自動走行が可能だよ。しかし、自分で走行ルートを決めたり、障害物を避けて走行することができなかったんだ。

AMR(自律走行搬送ロボット)とは?

はまちゃん: 自分でルートを決めて走行することができるロボットはないのですか?

橋本先生:自律走行が可能なロボットは、AMR(自律走行搬送ロボット)と呼ばれているよ。非ガイド走行方式 AGVや次世代AGVと呼ばれることもあるんだ。

■AMR(自律走行搬送ロボット)とは?

Autonomous (collaborative) Mobile Robotの略。 誘導体を必要とせず、搭載されたLiDARから壁や柱までの距離を計測する。周囲の環境地図を作成しつつ、その地図上で自己位置を推定する方式を採用。 JIS D6802「無人搬送車システム-安全規則」では、「その稼働領域を人と共存,共用する無人搬送車を用いて,物の搬送,荷役を行う自動搬送システムである」と記載されている。

AMR(自律走行搬送ロボット)

はまちゃん: 自律走行可能なAMR(自律走行搬送ロボット)の登場で、製品・部品を自動的に回収・搬送できるようになったのですね!

自動的に回収・搬送できるようになったのですね!

AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の違いは?

はまちゃん:運ぶことができる製品・部品は同じなのですね!では、AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)にはどのような違いがあるのでしょうか?

橋本先生:AGV(無人搬送車)は決まったレール上を走る電車のような役割をしているのに対し、AMR(自律走行搬送ロボット)は人との協働が可能な車のようなイメージかな。 誘導方式に注目すると、図のような違いがあるよ。最近は、ハイブリッド型も出てきているんだって。 また、AMR(自律走行搬送ロボット)は、協働ロボットと組み合わせて利用することもあるんだよ!

AMRとAGVの違い

  AGV AMR
電磁誘導 画像認識 SLAM
磁気誘導 レーザー誘導
精度
柔軟性
手軽さ
信頼性
価格

はまちゃん:前回学んだ協働ロボットがここでも活躍しているのですね!

※詳しくはこちら ▶ 協働ロボットって?ロボット・機械・人の安全を守る仕組みを紹介

AMR(自律走行搬送ロボット)やAGV(無人搬送車)の重要な要素とは?

はまちゃん:AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の重要な要素を教えてください。

障害物を検知するレーザSLAM技術

橋本先生:第4世代のAMR(自律走行搬送ロボット)は一般的にSLAM方式を採用しているよ。カメラやレーザーセンサーで周りを見て、エンコーダやジャイロスコープを併用して自分の位置を推定することができるんだ。SLAM技術が関連した製品は、最新型のお掃除ロボットやドローンの自動操縦による配達、火星探査機ローバーなどがあるよ。

AGV(無人搬送車)の重要な要素を教えてください。

■SLAM技術とは?

SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術のこと。自己位置推定(Localization)と環境地図作成(Mapping)を行うことが可能。

はまちゃん:SLAM技術は身近な場所でも活躍しているのですね!

Visual SLAMとLiDAR SLAM

橋本先生:SLAMには、カメラで撮影した画像処理を基にするVisual SLAMと、LiDARで計測した点群データを基にするLiDAR SLAMがあるよ。

■Visual SLAM

カメラで撮影された映像から、環境地図、場所の3次元情報とカメラの位置姿勢を同時に推定する技術で、カメラは単眼カメラ、ステレオカメラなどが利用される。

■LiDAR SLAM

LiDAR (Light Detection and Ranging) というレーザーセンサー (距離センサー)で取得した周囲の点群データを基に、2次元環境地図をリアルタイムに生成し地図上での自己位置推定を同時に行う。

橋本先生:LiDARは自動運転やドローン、2020年3月に発売されたiPad Proに採用されているよ。3D空間をスキャンして拡張現実(AR)モデルを簡単に作れるアプリも登場しているんだ。

はまちゃん:最近、家具を試し置きできる拡張現実(AR)アプリを使いました!技術はさらに進化しているのですね!

緊急停止機能

橋本先生:最近のAMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)は小型~大型まで開発されているよ。大きい製品・部品では、重量が1トンを超えるものまで搬送できるんだ。

はまちゃん:すごいですね!緊急時に要求される機能も増えていきそうです。

橋本先生:その通り。そこで、活躍しているのが無励磁作動形ブレーキなんだ。 昼夜動き回るAMR・AGVの緊急停止用のブレーキには、さまざまなことが要求されるんだよ。

・大容量で確実に停止できるブレーキ
・信頼性が高いブレーキ
・寿命が長いブレーキ
・メンテナンス性に優れたブレーキ
・消費電量の節約ができるブレーキ
  (バッテリー駆動のAMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)の場合)

■AGVの駆動輪

 
AGVの駆動輪の断面図

橋本先生:モータ一体型のAGV駆動輪の構造は写真のようになるよ。 真ん中あたりについているのが無励磁作動形ブレーキ。 一体型でない場合は、モータとの接続にカップリングを使用するのがおすすめだよ。 取り外しが簡単で、メンテナンス時の作業効率がアップするよ。

■カップリングの取り付け例

AGVの駆動輪 カップリングの取り付け例

はまちゃん:AMR(自律走行搬送ロボット)とAGV(無人搬送車)が安全に稼働するには、無励磁作動形ブレーキカップリングの存在が重要なのですね。

安全に稼働するには、無励磁作動形ブレーキやカップリングの存在が重要なのですね。
橋本先生
監修・講師
橋本先生 / 三木プーリ株式会社

1972 年三木プーリ株式会社 入社。プロダクトマネージャーとしてマー ケティング・技術を担当し、国内外問わずに活躍。
さらに、企業のみならず大学や専門機関との共同研究にも従事。 現在は、技術指導・社員教育も担当。

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