ゼロから学ぶ機械要素部品 ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)とは? ~役割と構造、使い方の注意点を徹底解説!~

ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)とは?

ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)の写真

パスカルの原理を利用した、ボルト一本で高精度取り付けが可能な機械要素です。
摩擦式締結具とも呼ばれ、ポジロックと同等以上の機能を果たします。
工作機械や半導体製造装置、食品機械など、幅広く使用されています。

※詳しくはこちら →【摩擦式締結具とは】

ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)の役割

一般的な軸締結方法である、キーやセットビスが持つ課題を解決するために開発された締結要素です。
キーレスブッシングとも呼ばれています。

※詳しくはこちら →【摩擦式締結具の役割】

■キー、セットビスの課題

■軸の問題 ■精度の問題 ■振動の問題
軸にキー溝や平取り加工が必要。使っているうちに軸に傷がついたり、軸痩せや焼き付きが起こる可能性がある。 キー、セットビス軸の問題 位相合わせが難しく、回転バランスが悪いため、バックラッシが発生する可能性がある。 キー、セットビス精度の問題 振動などでキーの抜け落ちや止めネジのゆるみが発生する場合があるため、抜け止めやゆるみ止めが必要になる。 キー、セットビス振動の問題

ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)の特長と構造

※詳しくはこちら →【ETPブッシュ(ハイドロ方式)】

■ETP-E Plus

ETP-E Plusの写真

軸とハブの締結をボルト1本で簡単・迅速に行えます。しかも同心度は0.02mmと優れているので、高精度が必要で着脱頻度の高いところに最適です。ラジアル方向から締め付ける構造なので作業スペースを取りません。

■ 動作原理

ETP-E Plusの動作原理イラスト

チャンバー内に封入されている圧力媒体は、プレッシャースクリューの締め込みにより加圧されてスリーブ内に移行します。この圧力媒体の加圧で、スリーブは内部から圧力を受け、 軸側スリーブは収縮し、ハブ側スリーブは拡張し、軸とハブはスリーブを介して締結されます。

■ETP-T

ETP-Tの写真

軸とハブの締結をボルト1本で簡単・迅速に行えます。しかも同心度は 0.006mmと優れているので、高精度が必要で着脱頻度の高いところに最適です。ラジアル方向から締め付ける構造なので作業スペースを取りません。

■ 動作原理

ETP-Tの動作原理イラスト

チャンバー内に封入されている圧力媒体は、プレッシャースクリューの締め込みにより加圧されてスリーブ内に移行します。この圧力媒体の加圧で、スリーブは内部から圧力を受け、軸側スリーブは収縮し、ハブ側スリーブは拡張し、軸とハブはスリーブを介して締結されます。

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ETPブッシュ(摩擦式締結具/ハイドロ方式)の使用時の注意

■製造現場での注意事項

1.プレッシャースクリュー、止めねじ(ETP-Tのみ)を取り外さないでください。

油漏れや内部媒体の圧力変化が起こり正しく締結できなくなることがあります。

OKのイラスト
NGのイラスト

【NG】ねじ類の完全取り外し

2.空締めしないでください。

内径部分が変形し、取り付けできなくなってしまうことがあります。

OKのイラスト
NGのイラスト

【NG】軸、ハブが挿入されていない(空締め)

3.校正したトルクレンチを使用してください。

トルク値がわからない道具(Lレンチ等)を使用すると、締め付けトルクが過大になり、ETPが破損してしまうことがあります。
締め付けトルクを確認し、トルクチェッカーで校正したトルクレンチを使用して取り付けてください。

OKのイラスト
ETP- E Plus
プレッシャースクリューの締め付けトルク一覧表/端部許容取り付け寸法(許容長さS)

※タイプが異なってもサイズが同じであれば、締め付けトルクは同じ値です。
※取り付けハブの内径公差は、全サイズとも「H7」で共通です。

【型式の見方】

タイプ/NH:h7軸対応,CH:h7軸対応(無電解ニッケルめっき仕様),RH:h7軸対応(ステンレス仕様),NK:k6(j6) 軸対応,CK:k6軸対応(無電解ニッケルめっき仕様)
サイズ タイプ 呼び径 二面幅[mm] 締め付けトルク[N・m] 許容長さS[mm]
ETP-E-015 NH CH RH - - M10 5 7 2
ETP-E-019 NH CH - NK CK M10 5 7 2
ETP-E-020 NH CH RH - - M10 5 7 2
ETP-E-022 NH CH - NK CK M10 5 7 3
ETP-E-024 NH CH - NK CK M10 5 7 3
ETP-E-025 NH CH RH - - M10 5 7 3
ETP-E-028 NH CH - NK CK M10 5 7 4
ETP-E-030 NH CH RH - - M10 5 7 4
ETP-E-032 NH CH - NK CK M10 5 7 4
ETP-E-035 NH CH RH - - M10 5 7 4
ETP-E-038 NH CH - NK CK M16 8 24 5
ETP-E-040 NH CH RH - - M16 8 24 5
ETP-E-042 NH CH - NK CK M16 8 24 5
ETP-E-045 NH CH RH - - M16 8 24 5
ETP-E-048 NH CH - NK CK M16 8 24 5
ETP-E-050 NH CH RH - - M16 8 24 5
ETP-E-055 NH CH - NK CK M16 8 24 5
ETP-E-060 NH CH RH - - M16 8 24 5
ETP-E-070 NH - - - - M20 10 40 8
ETP-E-080 NH - - - - M20 10 40 8
ETP-E-090 NH - - - - M20 10 40 8
ETP-E-100 NH - - - - M20 10 40 8
ETP- T
プレッシャースクリューの締め付けトルク一覧表/端部許容取り付け寸法(許容長さS)

※取り付けハブの内径公差は、全サイズとも「H7」で共通です。

【型式の見方】

タイプ/表記無し:標準仕様(h8軸対応),C:無電解ニッケルめっき仕様(h8軸対応)
サイズ タイプ 呼び径 二面幅[mm] 締め付けトルク[N・m] 許容長さS[mm]
ETP-T-15 表記無し C M12 6 12 5
ETP-T-19 表記無し C M12 6 12 5
ETP-T-20 表記無し C M12 6 12 5
ETP-T-24 表記無し C M14 6 16 5
ETP-T-25 表記無し C M14 6 16 6
ETP-T-30 表記無し C M14 6 16 6
ETP-T-35 表記無し C M14 6 16 6
ETP-T-40 表記無し C M16 8 24 7
ETP-T-50 表記無し C M16 8 24 8
ETP-T-60 表記無し C M20 10 40 9
ETP-T-70 表記無し - M20 10 40 10
ETP-T-75 表記無し - M20 10 40 10
ETP-T-80 表記無し - M20 10 40 10
ETP-T-90 表記無し - M22 10 60 10
ETP-T-100 表記無し - M24 12 80 10

4.製品の着脱回数を守って使用してください。 

着脱回数は製品ごとに異なります。以下の表でご確認ください。

型式 着脱回数(回)
ETP-E(N) ETP-E-015-N~035-N 3000
ETP-E-038-N~060-N 2000
ETP-E-070-N~100-N 750
ETP-E(C) ETP-E-015-C~035-C 1500
ETP-E-038-C~060-C 1000
ETP-E(R) ETP-E-015-R~035-R 1200
ETP-E-040-R~060-R 600
ETP-T ETP-T-15~50 5000
ETP-T-60~80 3000
ETP-T-90*100 500
ETP-T(C) ETP-T-15-C~50-C 5000
ETP-T-60-C 3000

着脱時には、プレッシャースクリューへの異物の付着を防ぎ、モリブデン系、シリコン系、フッ素系の減摩剤などを含んだオイルやグリース類が
常にプレッシャースクリュー表面に塗布された状態を保ってください。

■設計時の注意事項

5.ラジアル荷重の許容値を確認してください。

規定値以上のラジアル荷重(縦方向の力)がかかると、ETPが破損してしまうことがあります。
製品仕様ページにて、許容値をご確認ください。

※詳しくはこちら →【ETP E-Plus仕様】【ETP-T仕様】

・破損しやすい極端な例
破損しやすい極端な例のイラスト   

モータの出力軸と中空軸ローラ(支持ベアリング)のミスアライメントにより発生ずるこじり力が、 ETPブッシュに過大なラジアル荷重としてかかる。

6.軸の挿入量を確認してください。

軸とハブの挿入量が不足していると、ETPの変形やスリップに繋がる可能性があります。
以下の挿入量を参考に均一に圧力がかかるようハブ(ギア・プーリ、その他)を設計してください。

OKのイラスト
NGのイラスト

【NG】軸(赤)ハブ(青)が全面接触していない

・端部の許容範囲

製品の性能は、軸側基準寸法LSおよびハブ側基準寸法Lhに対し、軸およびハブが全長にわたり作用している場合のものです。したがって、軸およびハブは基準寸法に対し全長にわたり作用するよう設計してください。設計上、軸・ハブの長さが制限される場合は、下図S寸法以下になるようにしてください。S寸法を超えた場合は、スリーブ端部に応力が集中し、スリーブが変形し取り外しが不可能となります。

ETP-E Plusサイズ S[mm]
ETP-E Plus寸法図 015 2
019 2
020 2
022 3
024 3
025 3
028 4
030 4
032 4
035 4
038 5
040 5
042 5
045 5
048 5
050 5
055 5
060 5
070 8
080 8
090 8
100 8
ETP-Tサイズ S[mm]
ETP-E Plus寸法図 15 5
19 5
20 5
24 5
25 6
30 6
35 6
40 7
50 8
60 9
70 10
75 10
80 10
90 10
100 10
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7.正しい軸公差で製品を選んでください。 

取り付けたい[軸の径・公差]と[ハブの穴径・公差]のサイズが合っていないと、正しく取り付けが 行えません。
選定時に取り付け軸公差を確認してください。

・取り付け軸公差と取り付けハブ公差および表面粗さ
型式 取り付け軸公差 取り付けハブ公差 表面粗さ
ETP-EPlus ETP-E-□-NH・CH・RH h7(g6・h6) H7 25S(中心線平均
粗さ6.3a 以下)
ETP-E-□-NK・CK k6(j6)
ETP-T ETP-T-□ h8
ETP-T-□-C